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       これさだのみこの家の歌合せのうた 壬生忠岑  
296   
   神なびの  みむろの山を  秋ゆけば  錦たちきる  心地こそすれ
          
        「みむろの山」を秋に行く時は、まるで、高価な錦を自由自在に我が物として身につけることができるような気がする、という歌。

  "神なびの みむろの山" とは、「神のいる神聖な山」ということであり、284番の「竜田川 もみぢ葉流る」という歌でも使われている。その歌からの連想で、この歌のは竜田川の近くと見ることもできるだろう。 "たちきる" とは錦の縁語で 「裁ち+着る」であるという解釈が一般的である。 「こそすれ」という言葉を使った歌の一覧は 1029番の歌のページを参照。

  紅葉以外の 「葉」に関連して "みむろの山" が使われているものとしては、「神がきの」と修飾されている次の 「採物(とりもの)の歌」がある。紅葉と常緑の榊葉の対比と見ても面白い。

 
1074   
   神がきの    みむろの山の   さかき葉は  神のみまへに  しげりあひにけり
     
        「錦」を詠った歌には次のようなものがある。

 
     
56番    みやこぞ春の  なりける  素性法師
265番    誰がための  なればか 秋霧の  紀友則
283番    渡らば  中や絶えなむ  読人知らず
291番    山の  おればかつ散る  藤原関雄
296番    たちきる  心地こそすれ  壬生忠岑
297番    奥山の  紅葉は夜の なりけり  紀貫之
314番    竜田川  おりかく 神無月  読人知らず
420番    紅葉の  神のまにまに  菅原朝臣
864番    おもふどち  まとゐせる夜は 唐錦  読人知らず
1002番    唐錦  竜田の山の もみぢ葉を  紀貫之


 
( 2001/10/16 )   
(改 2004/03/07 )   
 
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