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       花ざかりに京を見やりてよめる 素性法師  
56   
   見渡せば  柳桜を  こきまぜて  みやこぞ春の  錦なりける
          
     
  • こきまぜて ・・・ 取り混ぜて
  
見渡せば、柳と桜を取り混ぜて、都は春の錦のようだ、という歌。絵画的で美しい歌である。言葉としては、漢詩に先例がありそうだが、 「柳」と 「桜」を "柳桜" と一つの言葉のようにまとめて軽く流しているところが面白い。また、錦つながりで言えば、この歌の"みやこぞ春の  錦なりける" という部分は、291番の藤原関雄の 「山の錦」、297番の貫之の 「夜の錦」と似た面白さがある。 「錦」を詠った歌の一覧については 296番の歌のページを参照。

  
「例解 古語辞典 第三版」 (1993 三省堂 ISBN4-385-13327-1)の付録の 「解釈の道すじ」という項に、この歌の "みやこぞ" の 「ぞ」について、「秋の錦」(=紅葉)に対して都こそが 「春の錦」であるという気持ちが込められている、という解釈があってなるほどと思わせる。

  "こきまぜて" の 「こく (扱く)」には、
  • (稲穂などを) しごき落とす
  • (花などを) 摘み取る
という二つの意味がある。どちらも似たような感じでもあるが、この歌の 「扱き混ず」は後者からきた言葉で、「取って混ぜる」から 「取り(あつらえて)混ぜる」ということを表しており、 932番の歌の「山田の稲の こきたれて」などは 「しごき落とす」の方からきている言葉である。この 「扱く」が使われている歌をまとめてみると次の通り。

 
     
56番    見渡せば 柳桜を  こきまぜ  素性法師
309番    もみぢ葉は 袖にこき入れ  もていでなむ  素性法師
639番    明けぬとて かへる道には  こきたれ  藤原敏行
922番    こき散らす 滝の白玉  拾ひおきて  在原行平
932番    かりてほす 山田の稲の  こきたれ  坂上是則
1005番    玉の緒とけて こき散らし  あられ乱れて  凡河内躬恒


 
( 2001/09/19 )   
(改 2004/03/07 )   
 
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