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       みづくきぶり 読人知らず  
1072   
   水くきの  岡のやかたに  妹とあれと  寝ての朝けの  霜の降りはも
          
     
  • やかた ・・・ 仮の宿所
  • あれ ・・・ 自分 (吾)
  • 朝け ・・・ 夜明け方 (朝明)
  詞書の 「みづくきぶり」の 「ぶり」とは 「曲/調べ/風」ということで、楽曲+歌詞を表すために、その歌詞の先頭や、詠われている地名などをとって識別名としていたものと思われる。

  歌の意味は、
「水くきの岡」の仮屋で二人が寝た時、明け方に見たあの霜の白さよ、ということ。歌の中では特に霜の「白さ」については触れられていないが、共寝の翌朝の情景として、嫌な寒さではなく、印象に残る寒さということで 332番の「朝ぼらけ 有明の月と 見るまでに」という坂上是則の歌のような状況と見てみたい。

  「水くきの岡」は
「古今和歌集全評釈(下)」 (1998 片桐洋一  講談社 ISBN4-06-208753-7) によれば、現在の福岡県遠賀(おんが)郡にある遠賀川の河口あたり。この 「水くきの岡」を使った歌は万葉集に四首あるが、万葉集・巻六968には 「水くきの水城の上の」という表現があり、そこでは 「水くきの」が枕詞として使われているようである(「水城(みづき)」は大宰府を守るための堤)。
 「はも」は詠嘆を表す連語で、478番の忠岑の歌と 891番の読人知らずの歌でも使われている。

  「〜ぶり」という詞書を持つ歌には、次の 「近江ぶり」と 「しはつ山ぶり」の歌がある。

 
1071   
   近江 より  朝立ちくれば  うねの野に  たづぞ鳴くなる  明けぬこの夜は
     
1073   
   しはつ山   うちいでて見れば  笠ゆひの  島こぎ隠る  棚なし小舟
     

( 2001/09/18 )   
(改 2004/02/22 )   
 
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