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       題しらず 凡河内躬恒  
1035   
   蝉の羽の  一重に薄き  夏衣  なればよりなむ  ものにやはあらぬ
          
        蝉の羽(は)のように一重で薄い夏の衣のような、あくまで薄情なあなたの心も、着馴れれば衣がよれるように、親しくなれば、私の心に寄るものではないだろうか、という歌。

  "一重に"を 「偏へに(=ひたすら)」に掛け、衣の縁語で 「(着)馴れる/縒る(=糸が偏る)」を、「人に馴れる/人に寄る」と合わせている。 「馴れる」ということでは、410番の業平の「きつつなれにし つましあれば」という歌が連想され、「よる」ということでは、1054番の久曽(くそ)の「我が身に糸の よると言へば」という歌が思い出される。

  「なればよりなむもの」という衣を使った譬えは、特に 「夏衣」でなくともかまわないので、この歌のポイントは、「蝉の羽のようにひたすら薄い心」という点にあると思われる。 「やは」を使った歌の一覧は 106番の歌のページを参照。

 
( 2001/12/05 )   
(改 2004/02/17 )   
 
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