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       題しらず 読人知らず  
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   葦辺より  雲ゐをさして  行く雁の  いや遠ざかる  我が身かなしも
          
     
  • 葦辺 ・・・ 葦の生えている水辺
  • 雲ゐ ・・・ 雲、あるいは雲のある場所
  • いや ・・・ ますます、という意味を添える接頭語 (弥)
  
葦の生えている水辺から雲を目指して飛んでゆく雁のように、ますますあなたが遠ざかってゆくこの身が悲しく思われることです、という歌。遠ざかってゆく "雁" は相手の男性を譬えたものであろうが、この歌からは、地上から飛んでゆく雁をむなしく見送る映像と、それを上空から映している映像の二つが交錯しているようなイメージが想像される。 「葦辺」の近さ、「雲ゐ」の遠さという語感がうまく使われている歌である。

  「いや」という接頭語を使った歌の一覧は 644番の歌のページを、「かなし」という言葉を使った歌の一覧は 578番の歌のページを参照。

 
( 2001/11/19 )   
(改 2004/01/23 )   
 
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