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       題しらず 読人知らず  
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   我が身から  うき世の中と  名づけつつ  人のためさへ  かなしかるらむ
          
        自分自身のせいで 「憂き世の中」と名づけていながら、どうして人の分まで心が痛むのだろう、という歌。自分のことで手一杯なはずなのに、その上他人の分まで...という感じであろうか。

  "我が身から"の 「から」は、807番の藤原直子(なほいこ)の 「海人の刈る 藻にすむ虫の 我からと」という歌と同じで、「〜が原因で」という意味。 "人のためさへ" の 「ため」にも 「〜のために」という意味の他に 「〜が原因で/〜のせいで」という意味がある。 「さへ」を使った歌の一覧は 122番の歌のページを、「かなし」という言葉を使った歌の一覧については 578番の歌のページを参照。

  また、「名づける」という表現を使った歌としては他に、453番の「誰かわらびと 名づけそめけむ」という真静法師の物名の歌と 698番の「恋しとは たが名づけけむ ことならむ」という清原深養父の歌がある。

 
( 2001/12/04 )   
(改 2004/02/10 )   
 
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