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       題しらず 藤原直子  
807   
   海人の刈る  藻にすむ虫の  我からと  ねをこそなかめ  世をばうらみじ
          
     
  • ねをこそなかめ ・・・ 声を上げて泣こうとも
  藤原直子(なほいこ)は生没年不詳、874年従五位下、877年正五位下、879年従四位下、882年従四位上、902年正四位下。古今和歌集にとられているのはこの一首のみである。

 
自分のせいだと声に上げて泣きはするけれど、世を恨むようなことはしません、という歌。 「藻」「音」「世」と一音の語を散らすことにより、歌のリズムが出ている。

 "藻にすむ虫の 我から" とは 「割殻(ワレカラ)」という虫(甲殻類)のこと。ただし、意味的には 
「藻にすむ虫(ワレカラ)が−鳴く」とはつながりづらいので、ここの 「ね」は 「海人の刈る藻→根がない→音をなく」ということだろうか。 「音に鳴く」という表現を使った歌の一覧は 150番の歌のページを参照。 「海人の刈る」には 「相手が離る(かる)」が掛けられていて、 "世をばうらみじ" には、次の読人知らずの歌などと同じように 「海人」の縁語で 「浦」が掛かっていると見ることができる。

 
816   
   わたつみの  我が身こす浪  立ち返り  海人の住むてふ    うらみ つるかな
     
        つまり、あなたが離れていって独りで住む私は頼るものもなく、声を上げて泣きますけれど、二人の関係を後悔するものではありません、というような感じか。また、作成時期の前後は不明だが、「海人の刈る藻」を 「思ひ乱る」に合わせた次のような歌もあるので合わせて見ておきたい。

 
934   
   幾世しも  あらじ我が身を  なぞもかく  海人の刈る藻に    思ひ乱るる  
     
        「〜こそ〜をば」というかたちを持った歌の一覧は 278番の歌のページを参照。

 
( 2001/11/15 )   
(改 2004/03/09 )   
 
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