Top  > 古今和歌集の部屋  > 巻十六

       題しらず 読人知らず  
855   
   なき人の  宿にかよはば  郭公  かけて音にのみ  なくとつげなむ
          
     
  • かけて ・・・ 心にかけて
  
亡き人の家に通うのであれば、ホトトギスよ、私も心にかけて声を上げて泣いていると伝えて欲しい、という歌。事情があって弔いに行けず、離れた場所からホトトギスの胸に響く声を聞いて、思いを託したという感じであろう。

  ただし、この歌には、ホトトギスが死後の世界(「死出の山」)との往復をするという言い伝えから、賀茂真淵「古今和歌集打聴」などのように 「
なき人の宿とは黄泉(ヨミ)の事也」と見る説がある。これは一見、嘘くさい説ようにも思えるが、 "つげなむ" を重く見れば、「亡き人の家(にいる遺族)」に 「告げて欲しい」というのはどこか不自然な気もしてくる。 829番の小野篁の歌の「わたり川」が三途の川ならば、この歌の 「なき人の宿」も 「亡くなった人のいる場所」として、そこにいる 「亡き人」に告げて欲しいと言っている歌と見てもおかしくはないと思われる。

  "かけて" の 「かく」という言葉を使った歌の一覧については 483番の歌のページを参照。また、「音に鳴く」という表現を持つ歌の一覧は 150番の歌のページを参照。

 
( 2001/11/28 )   
(改 2004/01/27 )   
 
前歌    戻る    次歌