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       題しらず 読人知らず  
816   
   わたつみの  我が身こす浪  立ち返り  海人の住むてふ  うらみつるかな
          
     
  • わたつみ ・・・ 海
  
この身を越すほどの涙の浪と共に繰り返し、あなたを恨んでしまうことですよ、という歌。 "我が身こす浪" が何を言いたいのかわかりづらいが、要は 1093番の歌の「末の松山 浪も越えなむ」と同じで 「津波(ツナミ)」のことであろう。その大きさで、 818番の「ありそ海の 浜の真砂」と同じように量の多さを表している。

  間に挟まれている "海人の住むてふ" というのは 「浦」を出すための序詞と考えられるが、どこか粘るようなしつこさがあって、この歌の雰囲気と合っている。 「〜てふ」という表現を持った歌の一覧は 36番の歌のページを参照。 "うらみつる" は 「うらみ+つる」で、「恨む」の連用形+完了の助動詞「つ」の連体形。例のように 「浦見る−恨む」を掛けている。

  この歌は恋歌五にあるが、似たような歌としては、恋歌三に次の在原元方の歌がある。

 
626   
   あふことの  なぎさにしよる  浪なれば  うらみてのみぞ    立ちかへりける  
     
        「立ち返る」という言葉を使った歌の一覧については 120番の歌のページを参照。  
( 2001/11/26 )   
(改 2004/02/18 )   
 
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