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       題しらず 素性法師  
722   
   そこひなき  淵やは騒ぐ  山川の  浅き瀬にこそ  あだ浪はたて
          
     
  • そこひ ・・・ 果て (底ひ)
  • あだ浪 ・・・ 移ろいざわめく波 (徒波)
  
果てしない深さの淵は騒ぐことがあるでしょうか、山川の浅い瀬にこそ、ざわざわと波が立つのです、という歌。

   "あだ浪" に 「あだ名」(=浮ついた噂)を掛け、それが立つのは浅い関係だからで、深く思い合っている時にはバタバタしないものです、ということを相手に言い聞かせている歌である。 「あだ名」は 「なき名」と紛らわしいが、「なき名」は根拠のない噂、「あだ名」はうまくやっているという噂で、その感じを表わしている歌としては、秋歌上の 229番に「あやなくあだの をやたちなむ」というオミナエシを詠った小野美材の歌がある。 「あだ」という言葉を使った歌の一覧は 62番の歌のページを参照。

  「淵」と 「瀬」をペアで使っている歌の一覧は 493番の歌のページを参照。また、「やは」と 「こそ」がペアで使われている歌の一覧は 41番の歌のページを参照。

 
( 2001/12/10 )   
(改 2004/02/24 )   
 
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