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       返し 在原業平  
707   
   おほぬさと  名にこそたてれ  流れても  つひによる瀬は  ありてふものを
          
     
  • おほぬさ ・・・ 祓えの時に使われる大きな串についた幣 (大幣)
  この歌は一つ前の読人知らずの歌が、「大幣のように引く手あまたになっているので、恋しい気持ちはあるけれど頼みにはできない」と詠っているのに対したもの。

  歌の意味は、
この自分は大幣などと言われているが、大幣でも川に流れても最後にたどりつく瀬はあるのだけれど、ということ。最後にはお前のところに落ち着くよ、と言っているようでもあるが、実際には 「どこにいても落ち着かない、どこか安らげるところがあったらなあ」という思わせぶりな口調である。この歌の出だしの "おほぬさと 名にこそたてれ" というのは、62番の読人知らずの「あだなりと 名にこそたてれ 桜花」という歌と同じかたちであり、それは業平との贈答歌の元側となっている。

  また、この贈答歌以外に 「大幣」を使った歌としては、誹諧歌に次の読人知らずの歌がある。 「おほぬさ」を使った歌の一覧は 706番の歌のページを参照。

 
1040   
   我をのみ  思ふと言はば  あるべきを  いでや心は  おほぬさ にして
     
        また、「つひに」という言葉を使った歌には次のようなものがある。

 
     
340番    つひにもみぢぬ  松も見えけれ  読人知らず
702番    梓弓  ひき野のつづら 末つひに  読人知らず
707番    つひによる瀬は  ありてふものを  在原業平
793番    つひに我が身を  絶えぬと思はめ  読人知らず
861番    つひにゆく  道とはかねて 聞きしかど  在原業平
1064番    つひにはいかが  なると知るべく  藤原興風


 
        "ありてふものを" の 「〜てふ」という表現を持った歌の一覧は 36番の歌のページを参照。

 
( 2001/11/22 )   
(改 2004/02/18 )   
 
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