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       かひの国へまかりける時に道にてよめる 凡河内躬恒  
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   夜を寒み  置く初霜を  はらひつつ  草の枕に  あまた旅寝ぬ
          
        夜が寒いので置く初霜を打ち払いながら、旅の空の下、何度も寝ることである、という歌。詞書によると甲斐の国への旅上で詠まれたもので、季節は "初霜" という言葉から秋を指している。

  仮名序では、躬恒について 「前(さき)の甲斐の少目(しょうさかん)」と言っており、
「古今和歌集全評釈(下)」 (1998 片桐洋一  講談社 ISBN4-06-208753-7) に付されている 「古今和歌集目録」によれば、躬恒は 894年二月二十八日に甲斐権少目となっている。 「権少目」から後に 「少目」となったものか。 「二月」に "初霜" では合わないので、この歌は 894年のものではないだろうが、躬恒と甲斐の国をつなげる歌ではある。躬恒の歌としては、414番に「越の国へまかりける時、しら山を見てよめる」という詞書を持つ羇旅歌があるが、躬恒が越の国に赴任したという記録は残っていない。

  あまた旅寝ぬ" は 「多数度(あまたたび)+寝ぬ」に 「旅寝」を合わせたものとされている。あまり冴えた駄洒落ではなく、「旅の草枕、置き始めた霜を打ち払いつつ寝る」という 「古」への見立てとの接合面があらわで、無理に作り込まれたような窮屈さを感じる。

  「草枕」という言葉を使った他の歌としては、376番に「思ひたちぬる 草枕なり」という寵(うつく)の歌があり、「夜を寒み」という言葉を使ったものとしては、秋歌上に 211番の「夜を寒み 衣かりがね
 鳴くなへに」という読人知らずの歌などがある。 「〜を+形容詞の語幹+み」というかたちを持った歌については 497番の歌のページを参照。また、「初霜」を詠った歌の一覧は 277番の歌のページを参照。

 
( 2001/11/20 )   
(改 2004/03/08 )   
 
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