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       題しらず 読人知らず  
660   
   たぎつ瀬の  はやき心を  何しかも  人目つつみの  せきとどむらむ
          
     
  • たぎつ瀬 ・・・ 水が激しく流れる川瀬
  • 何しかも ・・・ どうして
  • つつみ ・・・ 堤防・土手
  
心は激しく早く逢いたい気持ちでいっぱいなのに、じれったいことに、どうしてこうも人目が邪魔をするのだろう、という歌。

  "たぎつ瀬の  はやき心" とは、651番の「吉野川 水の心は はやくとも」という歌と同じで、心せく感じを表している。 "人目つつみ" という言葉は、一つ前の次の歌でも使われていて、「人目を慎む(つつむ)」を 「堤(つつみ)」に掛けている。

 
659   
   思へども  人目つつみ の  高ければ  川と見ながら  えこそ渡らね
     
        こうして並べられている 「人目つつみ」という言葉だが、どうも 「慎み(つつみ)」だけでは掛かりが弱く、あまりいい感じのしない言葉である。 "何しかも" という言葉は 「何+し+か+も」ということであり、「し」は強調の助詞、「か」は疑問の助詞、「も」は詠嘆の助詞で、「かも」は連語として係助詞としても使われる。 「かも」を使った歌の一覧については 664番の歌のページを参照。

 
( 2001/08/20 )   
(改 2004/01/30 )   
 
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