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       題しらず 大江千里  
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   ねになきて  ひちにしかども  春雨に  濡れにし袖と  とはば答へむ
          
     
  • ひちにしかども ・・・ 濡らしてしまったのだけれども
  
声を上げて泣いて、涙で水浸しにしてしまったのだけれども、その袖はどうしたのかと訊かれたら春雨に濡れたのだと答えましょう、という歌。 "ねになきて" という弱い入り方から、「春雨」でまとめ上げた面白い感じの歌である。 「音に鳴く」という表現を使った歌の一覧は 150番の歌のページを参照。

  「春雨−濡れた袖」ということを使った他の歌としては、恋歌四の 731番の読人知らずの歌に「春雨の 降る日となれば 袖ぞ濡れぬる」というものがある。 「春雨」を詠った歌の一覧は 88番の歌のページを参照。

 "ひちにしかども" は、「ひち+に+しか+ども」で、「漬つ」の連用形+完了の助動詞「ぬ」の連用形+過去の助動詞「き」の已然形+「ども」である。この過去の助動詞「き」の已然形である 「しか」を使った歌の一覧は 172番の歌のページを参照。

 
( 2001/10/22 )   
(改 2004/03/08 )   
 
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