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       題しらず 読人知らず  
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   うちわびて  よばはむ声に  山彦の  答へぬ山は  あらじとぞ思ふ
          
     
  • うちわびて ・・・ 思い悩んで (うち侘ぶ)
  • よばはむ ・・・ 呼び続ける (呼ばふ)
  
つらい気持ちで何度も呼びかける声に、答えを返さない山はないと信じます、という歌。「呼ばふ」に「婚ふ」(=求婚する)が掛けられているかは微妙。 "あらじとぞ思ふ" という歌としては他に、11番の忠岑の歌と 419番の紀有常の歌がある。 「あらじ」という言葉を使った歌の一覧は 934番の歌のページを参照。山彦のように、何か今の自分の気持ちに対する反応が欲しい、自分の心の叫びが聞こえないのか、という感じであろうか。 "山" と言っているところに相手との距離感を感じる。

  また、この歌の "うちわびて" の 「うち」は 「打つ」の連用形からきた接頭語である。接頭語「うち」については 12番の歌のページを、「わぶ」については 152番の歌のページを参照。

 
( 2001/11/20 )   
(改 2004/02/05 )   
 
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