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       おきの国にながされける時に、舟にのりていでたつとて、京なる人のもとにつかはしける 小野篁  
407   
   わたの原  八十島かけて  こぎいでぬと  人には告げよ  海人の釣り舟
          
     
  • わたの原 ・・・ 海原
  • 八十島 ・・・ 多くの島々
  • かけて ・・・ 目指して
  詞書は 「隠岐に流された時に、舟に乗って出立する際に京にいる人のもとに送った」歌ということ。 「おきの国にながされける時」とは、遣唐使の船に乗らなかったことを罰せられて隠岐に流された838年十二月のことで、季節としては冬である。

  歌の意味は、
私のことを聞く人があれば、海の多くの島々に向けて漕ぎ出したと告げよ、海人の釣り舟よ、ということ。百人一首にも採られて有名な歌で、歌の調べや使われている言葉は綺麗だが、 "八十島かけて こぎいでぬと 人には告げよ" とは、実際は流罪地に行くのだが、自分には非がないので 「多くの島々を目指して漕ぎ出たと告げよ」と言っているようにも、「遣唐使の船には乗らなかったが、今度はちゃんと乗ったと告げよ」と言っているようにも見える。

  篁に非があったかどうかは別として、流罪の時の歌を 「羇旅歌」とすることはどうかとも思うが、その歌の姿をよしとして載せたものだろう。また、この歌の 「かけて」は内容からして、「目指して・めがけて」という感じであろうが、 5番の読人知らずの歌の 「春かけて」との関係も少し気になる。その他の 「かく」という言葉を使った歌の一覧については 483番の歌のページを参照。

  この歌と一つ置いた次の読人知らずの歌は、後世の 「今昔物語集」の巻二十四・第四十五話で、どちらも篁の歌としてペアで語られている。

 
409   
   ほのぼのと  明石の浦の  朝霧に  島隠れ行く  舟をしぞ思ふ
     

( 2001/12/04 )   
(改 2004/01/22 )   
 
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