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       題しらず 読人知らず  
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   ほのぼのと  明石の浦の  朝霧に  島隠れ行く  舟をしぞ思ふ
          
     
  • ほのぼのと ・・・ かすかに
  この歌は左注に「このうた、ある人のいはく、柿本の人麿がうたなり」とある。
かすかに明るくなってゆく明石の浦の朝霧の中で、島の影の中に消えてゆく舟のことを思う、という歌。

  朝霧でほのかに見えるようになった舟がまた島影に隠れてゆくという情景は幻想的であるが、 "舟をしぞ思ふ" で終わっているため、だからその舟がどうなのだ、ということは語られていない。譬えを用いず風景の描写だけで表わしている点は、191番の読人知らずの「白雲に 羽うちかはし 飛ぶ雁の」という歌などと似ていて、それは恐らく古今和歌集の 「古」の部類に入る歌の手法の一つであろう。

  歌の調べとしては、先頭の "ほのぼの" での繰り返しが 「かし/さぎり」と 「まがくれ/ぞ思ふ」によってフォローされ、バランスのとれたかたちとなっている。

 
( 2001/12/04 )   
(改 2003/12/09 )   
 
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