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       なぬかの日の夜よめる 凡河内躬恒  
180   
   七夕に  かしつる糸の  うちはへて  年のを長く  恋ひや渡らむ
          
     
  • うちはへて ・・・ ずっと続いて (うち延へて)
  • 年のを ・・・ 続いてゆく年月 (年の緒)
  歌の意味は、
七夕に貸した糸のようにずっと長く、これから何年も恋しい気持ちを持ちつづけるのだろうか、ということ。七夕(=織姫)に糸を 「貸す」とは、織物を織るという関係でその材料の糸を供えることを言ったものであろうが、その背景については不明。次の橘長盛(たちばなのながもり)の歌では滝を布に譬えてそれを 「貸す」と言っている。

 
927   
   主なくて  さらせる布を    七夕に   我が心とや  今日はかさまし  
     
        七夕に 「貸す」糸だから星まで届くほど長い、ということを言っているかどうかはわからないが、
 "年のを" の 「緒」が糸の縁語として使われていることは確かであろう。 "恋ひや渡らむ" というニュアンスはこの歌だけでは肯定的とも否定的とも判別し難いが、前後の七夕の歌や古今和歌集での以下の 「恋ひ渡る」歌などを見ると 「恋愛が成就しない状態で思いつづける」という否定的な状態を指しているようである。

 
     
180番    七夕にかしつる糸  恋ひや渡らむ  凡河内躬恒
383番    雪見るべくもあらぬ我が身  恋ひや渡らむ  凡河内躬恒
482番    雲ゐはるかになる神  恋ひ渡るかな  紀貫之
532番    沖へにもよらぬ玉藻  恋ひ渡りなむ  読人知らず
677番    安積の沼の花かつみ  恋ひや渡らむ  読人知らず
732番    堀江こぐ棚なし小舟  恋ひ渡りなむ  読人知らず
826番    長柄の橋  恋ひ渡る間に 年ぞへにける  坂上是則


 
        また、この歌の 「長く恋ひ渡る」という気持ちは、 624番の源宗于(むねゆき)の「春の日の 長くや人を つらしと思はむ」という歌と共通するものがあるように感じられる。

  「うちはへて」という言葉が使われている他の歌については 12番の歌のページを参照。

 
( 2001/11/27 )   
(改 2004/01/21 )   
 
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