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       題しらず 読人知らず  
677   
   陸奥の  安積の沼の  花かつみ  かつ見る人に  恋ひや渡らむ
          
     
  • 花かつみ ・・・ 野生の花菖蒲の一種か (諸説あり不明)
  「安積の沼」は、現在の福島県郡山市日和田町あたり。恋歌四の先頭にある歌で、歌のかたちは恋歌一の先頭にある 469番の「郭公 鳴くや五月の あやめ草」という歌に似ているが、「花かつみ」の実体が不明で、「かつ見る」の意味もよくわからない。その他の歌で「かつ見」が出てくるものとしては、次の在原滋春と貫之の歌がある。

 
372   
   別れては  ほどをへだつと  思へばや  かつ見 ながらに  かねて恋しき
     
880   
   かつ見 れば  うとくもあるかな  月影の  いたらぬ里も  あらじと思へば
     
        「かつ」は「且つ」で、「一方では/すぐに/それに加えて」などの意味があるが、「かつがつ」(=どうにか)の意味であるという説もある。三句目まではこの「かつ」を導くための序詞なので、歌の意味に関係しないことはわかりつつ、他に情報がないので、こうして(遠くにいて稀に)逢う人に恋続けるのでしょうか、という歌と見ておく。「恋ひ渡る」という歌の一覧については 180番の歌のページを参照。

 

( 2001/09/11 )   
(改 2004/01/07 )   
 
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