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       なぬかの日の夜よめる 凡河内躬恒  
179   
   年ごとに  あふとはすれど  七夕の  寝る夜の数ぞ  少なかりける
          
        詞書にある 「なぬかの日」とは 「七日の日」ということで、この歌は七夕の歌なので七月七日を指す。この歌での "七夕" は 「織女」のこと。

  
毎年この夜逢っているとはいえ、共に寝る夜の数は少ないのだ、という歌。十年でもたった十晩ではないか、ということなのだが、今ひとつ言いたいことが不鮮明である。要は一つ前の藤原興風の歌と同じ趣向なのだろう。 「寛平御時后宮歌合」(892年頃)ではこの二つの歌がペアとなっている
 (左:興風  右:躬恒)。ただ、この歌は 「左兵衛定文歌合」(905年)にも採られており、それが単に 「左兵衛定文歌合」が過去の歌を再録したものか、あるいは 「寛平御時后宮歌合」当時にはこの歌はなく、「左兵衛定文歌合」以後に興風の歌と合わせるかたちで 「寛平御時后宮歌合」に後付けされたものなのかは不明である。

 
178   
   契りけむ  心ぞつらき  七夕の  年にひとたび    あふはあふかは  
     
        躬恒には 612番のような歌もあり、それとこの歌二つを見ると、七夕が一年に一回逢えるのがそんなに気に入らなかったのか、と思わせるが、どうも古今和歌集の七夕の歌は、全体的に 「一年に一回しか逢えないなんてとんでもない」という否定的な方向にあるようである。

 
( 2001/10/31 )   
(改 2004/02/15 )   
 
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