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       みちのくのうた 読人知らず  
1092   
   最上川  のぼればくだる  稲舟の  いなにはあらず  この月ばかり
          
     
  • いなにはあらず ・・・ 嫌、というわけではない (否にはあらず)
  
最上川を上り下りする稲を運ぶ舟の名のように、嫌、というわけではありません、今月だけのこと、という歌。最上川は現在の山形県を流れる川なので、陸奥というより出羽国であろう。

  三句目までは 「否(いな)」を出すための序詞と考えられるが、 "この月ばかり" という部分がわかりづらい。 「稲舟」は稲を運ぶ舟だけれども、今回の積荷は稲ではないよ、ということを、「嫌ではないけれど、ちょっと待って」ということに掛けたものか。

  この歌は 「いな」を 「稲」に掛けているが、似たような歌で 「いね」に掛けているものに、803番の兼芸法師の「秋の田の いねてふことも かけなくに」という歌がある。

 
( 2001/10/30 )   
(改 2004/02/23 )   
 
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