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       ひるめのうた 読人知らず  
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   ささのくま  ひのくま川に  駒とめて  しばし水かへ  かげをだに見む
          
     
  • 駒 ・・・ 馬
  • 水かへ ・・・ 水をやれ (飼ふの命令形)
  
「ひのくま川」に馬を止めて、しばらく、水を飲ませよ、その間、川に映る姿だけでも見よう、という歌。 「ひのくま川」は現在の奈良県高市郡明日香村大字檜前(ひのくま)あたりを流れる檜隈川。

  「ひるめのうた」の 「ひるめ」とは、日本書紀にあるイザナギ・イザナミが生んだ 「日の神・おおひるめむち」のこととされる。この歌が何故 「ひるめのうた」とされているかは諸説あるが不明。万葉集・巻十二3097にはこの歌とほとんど同じ次の歌がある。

    さのくま  ひのくま川に  馬とどめ  馬に水かへ  我よそに見む

  "ささのくま" は、上記の万葉集の歌では 「さひのくま」となっており、それが変形したものか。 「さひのくま」は、接頭語「さ」+「ひのくま」であると言われている。 "しばし水かへ" の 「かへ」が 「飼ふ」の命令形であることは少しわかりづらい。馬に水をやって、しばらくそこに留まって欲しいということであろう。 「しばし」という言葉からは、872番の「乙女の姿 しばしとどめむ」という良岑宗貞(=僧正遍照)の歌が思い出される。 「駒」を詠った歌の一覧は 111番の歌のページを、「だに」という言葉を使った歌の一覧は 48番の歌のページを参照。

 
( 2001/11/20 )   
(改 2004/03/07 )   
 
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