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       題しらず 小野小町  
1030   
   人にあはむ  月のなきには  思ひおきて  胸はしり火に  心やけをり
          
     
  • 胸はしり ・・・ 心が騒ぐ (胸走る)
  
あなたに逢う手だてがない夜は、思いに目が冴えて、胸を焦がす火の粉に心が焼けて起きています、という歌。

  「月」と 「つき(=便宜・手段)」を掛け、 "思ひおきて" の 「おき」には 「起き」と 「熾(おき:=赤く燃える炭火)」が掛けられ、"胸はしり火" には「胸走る」と 「走り火(=火花)」を合わせられている。また、"思ひ" の 「ひ」は 「火」として、"胸はしり火" につながっている。 「月がない−つきがない」という掛詞を使った歌の一覧は 1048番の歌のページを参照。

  この歌では 「月」を出すことにより夜をイメージさせており、その点では一つ前の 1029番の紀有朋の歌と同じであり、この二つは贈答歌ではないもののかなり近いイメージを持っているように思われる。また、この小町の歌でのポイントは、その夜から "思ひおきて" という言葉により、闇の中ではじける熾の火につなげていることで、それにより 「冬」のイメージも加味されているようである。

  「熾」つながりということでは、466番に都良香(みやこのよしか)の 「おきび」の物名の歌がある。

 
( 2001/09/26 )   
(改 2004/02/18 )   
 
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