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       題しらず 読人知らず  
1022   
   いそのかみ  ふりにし恋の  かみさびて  たたるに我は  いぞ寝かねつる
          
     
  • かみさびて ・・・ 神のようになって
  • いぞねかねつる ・・・ 眠ることができない
  
昔からの報われない恋が、今では神のようになって祟るので、おちおち眠ることもできません、という歌。 "いそのかみ" は、「石上−古(布留)」から "ふりにし恋" を導いている。また、音という点ではその 「かみ」が "かみさびて" につながっている。 「いそのかみ」という言葉を使った歌の一覧は 870番の歌のページを参照。 "ふりにし恋" の 「ふり」は 「古る」の連用形。 「古る」を使った歌の一覧については 248番の歌のページを参照。

  「かみさぶ」は神々しくなるということだが、ここでは、古い木や石が神として祭られるように、ひどく長い時間ほっておかれた恋が成就しないのでそれが怨霊のようになった、ということを表している。 "ふりにし恋" とは、過去の恋愛で、昔の恋人の恨みが、と言っているようにも見えるが、やはりここでは長い間成就しない自分の思いが、ということであろう。 737番の源能有(よしあり)の歌の「おのがものから 形見とや見む」と似たニュアンスと考えられる。

  "いぞねかねつる" は、「寝(い)+ぞ+寝(ね)+かねつる」で眠るに眠れないという感じか。はじめの 「寝(い)」は名詞、次の 「寝(ね)」は一語の 「寝(ぬ)」という動詞の連用形である。同じような表現を使った歌については、767番の歌のページを参照。 「かねつる」は 「かね+つる」で、「〜できない」というニュアンスを表す接尾語「かぬ」の連用形+完了の助動詞「つ」の連体形である。 この 「かぬ」が使われている歌の一覧は 491番の歌のページを参照。

 
( 2001/10/11 )   
(改 2004/02/25 )   
 
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