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       つくしに侍りける時にまかりかよひつつ、碁打ちける人のもとに、京にかへりまうできてつかはしける 紀友則  
991   
   ふるさとは  見しごともあらず  斧の柄の  朽ちしところぞ  恋しかりける
          
     
  • 見しごともあらず ・・・ かつて見た様子とは異なっている
  詞書は 「筑紫にいた頃、通って碁を打っていた人のところに、都に帰ってきてから詠んで送った」歌ということ。
故郷に帰ってきてみるとまるで様子が変ってしまった、あの 「斧の柄が朽ちた」場所が懐かしく思われます、という歌。

   "斧の柄の 朽ちしところ" というのは、「晋の王質という者が山に樵に入ったところ、仙人が碁を打っていた。それを面白がって熱心に見物していると、いつの間にか斧の柄の部分が朽ちてしまった。これはいけないと思って、山を下りると、かつて知っていた人々はもう誰もいなくなるほど時間が経っていた。」という故事による。

  「恋しかりける」という表現は次のような歌で使われている。

 
     
146番    別れにし ふるさとさへぞ  恋しかりける  読人知らず
564番    置く霜の 消えかへりてぞ  恋しかりける  紀友則
883番    山もとは あなたおもてぞ  恋しかりける  読人知らず
991番    斧の柄の 朽ちしところぞ  恋しかりける  紀友則


 
( 2001/11/28 )   
(改 2004/02/10 )   
 
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