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       奈良へまかりける時に、荒れたる家に女の琴ひきけるを聞きてよみて入れたりける 良岑宗貞  
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   わび人の  住むべき宿と  見るなへに  嘆きくははる  琴の音ぞする
          
     
  • わび人 ・・・ 失意の人
  • なへに ・・・ 〜するにつれて
  詞書は 「奈良へ行った時、荒れた家で女が琴を弾いているのを聞いて、詠んで差し入れた」歌ということ。歌の意味は、
寂しく暮らしている人の家だと思って見ていると、そこに嘆きが加わるような琴の音が聞こえた、ということ。 "嘆きくははる" 作者の「嘆き」がより深まるということである。

  どこか物語調の歌であり、どこか 360番の躬恒の「声うちそふる 沖つ白浪」という歌と 586番の「秋風に かきなす琴の 声にさへ」という忠岑の歌を思い出させる。良岑宗貞=僧正遍照の歌には、292番の歌にも「わび人の わきて立ち寄る 木のもとは」という歌がある。 「わび人」という言葉を使った歌の一覧はその 292番の歌のページを参照。 「なへに」という言葉を使った歌の一覧については 211番の歌のページを参照。

  また、この歌の詞書にある 「荒れた宿」を詠った歌には 237番の兼覧王(かねみのおおきみ)のオミナエシを詠った「荒れたる宿に ひとり立てれば」という歌などがある。 「荒れたるもの」を詠った歌の一覧は、その 237番の歌のページを参照。

 
( 2001/10/10 )   
(改 2004/02/20 )   
 
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