Top  > 古今和歌集の部屋  > 巻十七

       題しらず 読人知らず  
907   
   梓弓  磯辺の小松  たが世にか  よろづ世かねて  種をまきけむ
          
     
  • かねて ・・・ あらかじめ (予て)
  この歌は左注に 「このうたは、ある人のいはく、柿本の人麿がなり」とある。

  
磯辺に生えている小ぶりな松は、いつの時代に、ずっと後の世を見こして種をまいたものであろう、という歌。あの松は古い、ということをひねった言い方で詠っている。ここで 「梓弓」は 「磯辺」の 「い」に掛かる枕詞である。 「い」は矢を 「射る」の 「い」。 「梓弓」と 「小松」を出しながら 「小松を引く」(=子の日に長寿を願って若い松を野原で引き抜くこと)に持っていっていないところがこの歌の特徴であるが、裏のイメージとしてはそれを含んでいると思われる。 「梓弓」という枕詞を使った歌の一覧は 20番の歌のページを参照。

  「松」と 「種」ということを詠った歌としては、512番の読人知らずの「しあれば 岩にもは おひにけり」という恋歌がある。 「かねて(予ねて)」という言葉を使った歌の一覧は 253番の歌のページを参照。

 
( 2001/09/27 )   
(改 2004/02/02 )   
 
前歌    戻る    次歌