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       題しらず 読人知らず  
904   
   ちはやぶる  宇治の橋守  なれをしぞ  あはれとは思ふ  年のへぬれば
          
     
  • なれ ・・・ おまえ (汝)
  • あはれ ・・・ いとおしい
  
宇治の橋守よ、お前のことを親しく思うよ、長い月日を経てきたので、という歌。 「宇治橋」は宇治川に掛かる橋で、現在の京都府宇治市宇治にある。宇治橋は「扶桑略記」などによると 646年に造られたものと言われるが、その「橋守」については特に逸話などはないようである。 「宇治の橋」の歌としては、恋歌四に次の読人知らずの歌がある。

 
689   
   さむしろに  衣かたしき  今宵もや  我を待つらむ  宇治の橋姫  
     
        "年のへぬれば" の主語は 「橋守」であろう。作者自身が年老いたので、「橋守」を「あはれと思ふ」と言っているようにも見えないこともないが、この歌に続く 905番や  906番の「住江の岸の姫松−幾世へし」と並べて見た場合、やはり、「橋守が、古い橋を長年管理しているので 「あはれ」と思ふ」ということであると見た方が自然のような気がする。もちろん、その根底には、作者自身が自分の老いを感じているから、ということがある。作者は男性も女性ともわからないが、長い間どこかに勤めた老臣の口ぶりのように感じられる。

  「あはれ」という言葉を使った歌の一覧は 939番の歌のページを参照。 「ちはやぶる」という枕詞を使った歌の一覧については 254番の歌のページを参照。また、"年のへぬれば" の 「経(ふ)」という言葉が使われている歌の一覧は 596番の歌のページを参照。

 
( 2001/10/12 )   
(改 2004/02/25 )   
 
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