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       返し 在原業平  
901   
   世の中に  さらぬ別れの  なくもがな  千代もとなげく  人の子のため
          
     
  • さらぬ ・・・ 避けられない
  • なげく ・・・ 請い願う
  
世の中に避けられない別れというものがなければよいのに、千年でも生きて欲しいと願う子のために、という歌。

  母の伊登内親王(いとないしんのう)から 「さらぬ別れも ありといへば」と顔を見たいという歌が送られてきたものに対し、 "なくもがな" として返した歌で、すぐには行くことはできないけれど、という感じであろうか。母の歌が 「いよいよ」と言っているのに対して "千代もとなげく" と受けて、命の終りに対して同じトーンを保っている。

  古今和歌集の配列のドライに見えるところは、こうしたやり取りの歌の後に業平の長男である在原棟梁の 「かへるがへるも 老いにけるかな」という 「かへる山」を使った 902番の駄洒落の歌を置いていることである。つまり業平の子の棟梁の 「老い」を見せることによって、その父が親との別れを愁う歌を強く過去に突き放しているような感がある。 「もがな」という願望の連語を使った歌の一覧については 54番の歌のページを参照。

 
( 2001/11/14 )   
(改 2004/02/06 )   
 
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