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       題しらず 読人知らず  
889   
   今こそあれ  我も昔は  男山  さかゆく時も  ありこしものを
          
        今でこそあれこんな様だが、自分も昔は男山の坂を行くように、盛んな時期も過ごしてきたものを、という歌。 "男山" は現在の京都府八幡市の岩清水八幡宮のある山と言われる。

  「坂行く−栄行く」を掛けたもので、非常にくだらなく、馬鹿々々しい感じの歌だが、 "我も昔は 男山" というフレーズはわりと耳に残る。 " ありこしものを" という部分は、
「古今和歌集全評釈(下)」
 (1998 片桐洋一  講談社 ISBN4-06-208753-7)
 によれば、「ありしものなり」である伝本が多く、元永本では 「ありにしものを」となっているそうである。

  似たような内容の歌としては、一つ前の 888番に読人知らずの「いやしきも よきもさかりは ありしものなり」という歌がある。古今和歌集の中で他にこの "今こそあれ" という言葉を使った歌はないが、「〜こそあれ」という表現を使った歌には、495番の「言はねばこそあれ 恋しきものを」という歌と、944番の「山里は もののわびしき ことこそあれ」という歌がある。また、次の平貞文の歌の 「時こそありけれ」もやや近い感じがする。

 
279   
   秋をおきて  時こそありけれ   菊の花  うつろふからに  色のまされば
     

( 2001/11/06 )   
(改 2004/03/15 )   
 
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