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       題しらず 読人知らず  
888   
   いにしへの  しづのをだまき  いやしきも  よきもさかりは  ありしものなり
          
     
  • しづ ・・・ 横糸を青や赤に染めて乱れ模様にした織物 (倭文)
  • をだまき ・・・ 糸を丸く巻いたもの (苧環)
  "しづのをだまき" は 「倭文(しづ)」という織物の材料(麻やコウジと言われている)の糸の巻いた玉を指している。恐らく一本の糸が青や赤にまだらに染められていたのではなく、色ごとに玉があったのだろう。

  この歌では「倭文」は「賤(しづ)」に掛けられて、「賤しき」を導いている。あるいは「賤の男(を)」までが掛けられているのかもしれない。歌の意味は言葉通りで、
身分の低いものも高いものも、盛りの時期はあったものだ、ということ。 "ありし" と過去形になっているので、今では年老いて、どちらも似たようなものになっているけれど、という含みがあるような気もする。

  古今和歌集の配列から言えばこの歌は、一つ前の 887番の読人知らずの「いにしへの 野中の清水 ぬるけれど」という歌と同じ出だしを持ち、889番以降に続くの老いの歌の入口に位置している。

 
( 2001/11/12 )   
 
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