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       題しらず 兼芸法師  
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   もろこしも  夢に見しかば  近かりき  思はぬなかぞ  はるけかりける
          
        遠い中国の地も夢に見れば近かった、それに比べて思い合わない二人の仲は遠いものだ、という歌。 "夢に見しかば" の 「しか」は過去を表す助動詞「き」の已然形。続く "近かり" と時制が合っている。この 「しか」を使った歌の一覧は 172番の歌のページを参照。

  歌単体でざっと見ると、恋歌一の 522番の歌にも「思はぬ人を 思ふなりけり」という歌もあり、恋の初めなの歌なのか、恋の終わりの歌なのかがわかりづらいが、この歌は恋歌五にあって、恋の終わりの歌である。そう言われてみれば 「思はぬなか」の 「なか(仲)」には、一度親密になったというニュアンスがある。この歌では "思はなか" であるが、717番の「思はなかは 離れなめ」という読人知らずの歌も思い出される。

  また、この歌の 「遠さ・距離感」は、同じ恋歌五にある 819番の読人知らずの「いや遠ざかる 我が身かなしも」という歌と響き合っているような感じもする。

 
( 2001/11/19 )   
(改 2004/01/18 )   
 
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