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       題しらず 読人知らず  
693   
   君こずは  ねやへもいらじ  濃紫  我がもとゆひに  霜は置くとも
          
     
  • ねや ・・・ 家の奥の方(の寝室) (閨)
  • もとゆひ ・・・ 上に束ねた髪の部分、あるいはそれを束ねる紐
  歌の内容は、
あなたが来なければ奥にも入りません、私の髪に霜が置くとしても、ということ。

  唐突に出てくる "濃紫" (こむらさき)という言葉が意表をつくが、これは 「黒髪」の代わりに髪の色を言ったものとも、髪を結ぶ紐の色を言ったものとも解釈されており、夜の闇の色とも考えられなくはないが仔細不明である。音としては 「こむらさき」に 「来む」が合わされているように見える。この歌では 「髪に霜が置く」というのは当然 「年をとる」ということではなく、ただ 「寒さも厭わず、ひたすらあなたが来るのを待つ」ということである。

  濃い紫という色からは、868番の「紫の 色濃き時は めもはるに」という業平の歌が連想される。 「紫」を詠った歌の一覧は 652番の歌のページを参照。

 
( 2001/11/22 )   
(改 2004/03/10 )   
 
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