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       題しらず 読人知らず  
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   あな恋し  今も見てしか  山がつの  かきほにさける  大和撫子
          
     
  • あな ・・・ ああ (感嘆詞)
  • 山がつ ・・・  山里に住む(身分の低い)人 (山賤)
  • かきほ ・・・ かきね (垣穂)
  
ああ恋しい、今また逢いたい、山里にある垣根に咲く、ナデシコの花のようなあの娘に、という歌。古今和歌集の 「古」の部類に入る歌であろう。 「あな」という感嘆詞が使われている歌の一覧は 
426番の歌のページを参照。 "見てしか" の 「しか」は願望を表す終助詞で、それが使われている歌の一覧は 1097番の歌のページを参照。 「大和撫子」を詠んだ他の歌としては秋歌上に次の素性法師の歌がある。

 
244   
   我のみや  あはれと思はむ  きりぎりす  鳴く夕影の  大和撫子  
     
        確かにこの二つの歌を並べてみると、歌の内容というよりも、いきなり "あな恋し" (ああ、恋しい)とはじまる、この読人知らずの歌の直情的な詠いぶりがはっきりする。下品と言えばそれまでだが、この 「山がつ」の歌はどことなく仮名序が大友黒主について言っている、「いはば薪負へる山びとの、花のかげに休めるがごとし。」という言葉を思い出させる。

 
( 2001/11/21 )   
(改 2006/04/10 )   
 
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