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       題しらず 壬生忠岑  
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   命にも  まさりて惜しく  あるものは  見はてぬ夢の  さむるなりけり
          
        命にもまして惜しく思えるものは、最後まで見ることができなかった夢が覚めたことである、という歌。後半は 「見はてぬ夢」だけでも意味として充分だが、それに "さむるなりけり" と念を押しているところが特徴と言えば特徴である。無理に作りこまずに自然に流した感じの歌である。

  「惜しくある」ということでは、65番の読人知らずの「折りとらば 惜しげにもあるか 桜花」という歌や、342番の貫之の「ゆく年の 惜しくもあるかな ます鏡」という歌があるが、「命も惜しくない」という恋歌としては 615番の「命やは なにぞは露の あだものを」という紀友則が思い出される。

 
( 2001/11/28 )   
(改 2003/12/30 )   
 
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