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       題しらず 凡河内躬恒  
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   君をのみ  思ひねに寝し  夢なれば  我が心から  見つるなりけり
          
     
  • 思ひね ・・・ 思いながら寝ること
  
あなたのことだけを思いながら寝た時の夢だから、あれは自分の心によって見たものなのだ、という歌。相手が自分のことを思って夢に現れてくれたわけではない、という感じであろうが、古今和歌集の配列から言えば、自力で夢を見るほど深く思っています、という歌のようにも見える。

  "思ひねに寝し" という部分の 「寝」の繰り返しが "君をのみ" という思いの深さを表した言葉とよく合っている。 「君をのみ」という言葉は、1002番の貫之の 「古歌たてまつりし時の目録の、その長歌」でも 「君をのみ 千代にと祝ふ」と使われているが、もう一つの 979番の宗岳大頼(むねおかのおおより)の「君をのみ 思ひこしぢの 白山は」という歌は、この歌の作者である躬恒の歌への返歌となっている。

 
( 2001/12/05 )   
(改 2003/12/30 )   
 
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