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       かはなぐさ 清原深養父  
449   
   うばたまの  夢になにかは  なぐさまむ  うつつにだにも  あかぬ心を
          
     
  • うばたまの ・・・ ここでは夢にかかる枕詞
  「ゆめになに
カハ ナグサまむ」に物名として詠み込まれている 「かはな草」とは、藻の一種の川もずくとも水苔とも言われている。ただ、何を指すかがはっきりとわからないため、いわゆる 「古今伝授」の 「三木一草」として伝承されていた。 「三木一草」とは、
  • をかたまの木 ・・・ 431番の紀友則の「泡をかたまの ゆと見つらむ」の歌
  • めどの木 ・・・ 445番の文屋康秀の「花の木に あらざらめども」の歌
  • けづり花 ・・・  上の歌の詞書
  • かはな草 ・・・ この歌
  であり、「和歌秘伝鈔」 (1941 飯田季治 畝傍書房) では、「古今伝授」の本文として 「かはな草」について次のような説を紹介している。
  • かはな草の 「かはな」は 「川菜」ではなく 「河花」の意味である。
  • 「かはな」だけでは言いにくいので、それに草をつけて、かはな草と言ったのである。
  • かはな草は川苔のことではなく、実は河骨(こうほね:スイレン科の多年草)のことである。
  • 蓮(はす)を別とすれば、水草の中で爽やかなものといえば河骨をおいて他にはない。
  • かはな草が河骨であることは京極黄門(=藤原定家)の説であり、これは秘伝である。
  そしてこの本文の評釈として飯田氏は、誰が何と言おうと 「かはな草」は 「倭名抄」にある通り、水苔のことである、と述べている。

  さて、この歌の意味は、
夢でいくら姿を見ようと心がなぐさめられるものではない、現実に逢ってさえ満足することがないのに、ということで、429番の深養父の 「からももの花」の物名の歌と同じく、恋歌の味付けがされている。

  「あかぬ心」を詠ったものとしては、賀歌ではあるが在原滋春に次の歌がある。

 
355   
   鶴亀も  千歳の後は  知らなくに  あかぬ心に   まかせはててむ
     
        「うつつ」という言葉が使われている歌の一覧については 647番のページを、「だにも」という言葉を使った歌の一覧については 79番の歌のページを参照。

 
( 2001/10/09 )   
(改 2004/02/10 )   
 
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