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       からももの花 清原深養父  
429   
   あふからも  ものはなほこそ  かなしけれ  別れむことを  かねて思へば
          
        「あふカラモ モノハナほこそ」の部分に 「からももの花」の物名を含む。 「唐桃」とは杏(あんず:apricot)のこと。古今和歌集の配列からすれば、この歌は一つ前の428番の貫之の 「李(すもも:plum)の花」とペアと考えられる。どちらも 「も/も」という部分を句の区切れに置いて、「ものは」を貫之は 「ものはながめて」と処理し、深養父は 「ものはなほこそ」とつなげている。

  歌の意味は、
逢ってもすぐに物悲しくなってしまう、それは別れることを先に想像してしまうから、ということで、 "あふからも" の 「から」は 「〜するとすぐに」ということ。大筋は 372番の在原滋春の「別れては ほどをへだつと 思へばや」という離別歌と同じである。ただ、深養父のこの歌には恋歌のニュアンスが含まれているようにも感じられる。似たような言葉を使った恋歌としては、次の小野小町の歌があげられる。そこでは 「たのみ」に 「頼み−田の実」が掛けられている。

 
822   
   秋風に あふ たのみ こそ    かなしけれ   我が身むなしく  なりぬと 思へば  
     
        「かなし」という言葉を使った歌の一覧については、578番の歌のページを、「かねて(予ねて)」という言葉を使った歌の一覧は 253番の歌のページを参照。

 
( 2001/08/21 )   
(改 2004/03/09 )   
 
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