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       かりの鳴きけるを聞きてよめる 凡河内躬恒  
213   
   憂きことを  思ひつらねて  雁がねの  鳴きこそわたれ  秋の夜な夜な
          
     
  • 雁がね ・・・ 雁の歌語 (本来は雁の鳴き声を指す)
  
辛いことをいろいろと思いながら雁は秋の夜な夜な鳴き渡るのだ、という歌で、 "わたれ" は 「こそ」があるための係り結びで已然形であり、命令形ではない。 "つらねて" は、思いを重ねてという意味からは 「連ぬ」であり、複数の雁が飛ぶ様からは 「列ぬ」である。 「連ぬ−渡る−夜な夜な」という 「連続」を表す言葉を集めて、 "憂きこと""が長く続くということを表している。

  935番の読人知らずの歌では、雁を前振りとして朝霧を出し「思ひつきせぬ 世の中の憂さ」としているが、この躬恒の歌では雁と秋の夜だけの道具立てで歌を通している。それでも、次のような読人知らずの歌の影響のために、その背景に 「月」が浮かんでいるようにも見える。

 
191   
   白雲に  羽うちかはし  飛ぶ雁の   数さへ見ゆる  秋の夜の月  
     
        また、他に「夜な夜な」という言葉を使ったものとしては、432番の読人知らずの物名の歌の中で、コオロギについて「夜な夜な鳴かむ 風の寒さに」と詠ったものがある。 「朝な朝な」という言葉を使った歌の一覧については 16番の歌のページを参照。

 
( 2001/12/03 )   
(改 2004/02/13 )   
 
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