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       題しらず 読人知らず  
192   
   小夜中と  夜はふけぬらし  雁がねの  聞こゆる空に  月渡る見ゆ
          
     
  • 小夜中 ・・・ 夜中の歌語
  • 雁がね ・・・ 雁の鳴き声
  
夜中まで夜は更けたようだ、雁の声が聞こえる空に月の浮かぶ姿が見える、という歌。この歌は万葉集とかぶっている歌の一つで、万葉集では巻九1701番にある。 "聞こゆる空に" と雁の姿を月の明るさから離して置き、大きな空間を描写している。仮名序の最後の 「大空の月を見るがごとくにいにしへを仰ぎて、今をこひざらめかも」という文章を思い起こさせる歌である。

  "夜はふけぬらし" の 「ぬらし」は完了の助動詞「ぬ」の終止形+推量の助動詞「らし」の終止形で、「〜したらしい」という意味を表す。古今和歌集の中で、この 「〜ぬらし」が使われている例は次の通り(「らし」が終止形でないものも含む)。

 
     
192番    小夜中と  夜はふけぬらし  読人知らず
319番    降る雪は  かつぞけぬらし  読人知らず
361番    佐保の河霧  立ちぬらし  壬生忠岑
488番    むなしき空に  満ちぬらし  読人知らず
1020番    秋風に  ほころびぬらし  在原棟梁


 

( 2001/11/29 )   
(改 2003/12/04 )   
 
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