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       寛平の御時きさいの宮の歌合せのうた 紀貫之  
156   
   夏の夜の  ふすかとすれば  郭公  鳴くひと声に  明くるしののめ
          
     
  • しののめ ・・・ 明け方。東の空が白らむ時間帯。 (東雲)
  
横になったかと思うとすぐに、ホトトギスの一声と共に明け方になる、という夏の夜の短さを詠った歌。雄鶏の鳴き声の代わりにホトトギスを持ってきて、 "ひと声" という言葉に時間の短さをうまく当てている。イメージ的にも "明くるしののめ" という言葉により、静かな明け方の空の空間的な広がりが感じられる。

  この歌は寛平御時后宮歌合にあり、そちらでは初句が「夏の夜」となっているが、ここでは 
「は」ではバランスが悪い。ちなみに「夏の夜は」ではじまる歌としては、166番に深養父の「夏の夜は まだ宵ながら 明けぬるを」という歌がある。また、同じ歌合には次の忠岑の歌も出されており、ホトトギスを使って夏の夜の短さを詠った点では同じだが、視点の違いが見えて面白い。

 
157   
   くるるかと  見れば明けぬる  夏の夜を   あかずとや鳴く  山郭公  
     
        「東雲」と 「鳥」を詠った歌としては他に、恋歌三に次の寵(うつく)の歌がある。

 
640   
   しののめの   別れを惜しみ  我ぞまづ  鳥より先に   なきはじめつる
     

( 2001/10/02 )   
(改 2003/02/23 )   
 
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