Top  > 古今和歌集の部屋  > 巻三

       月のおもしろかりける夜、暁がたによめる 清原深養父  
166   
   夏の夜は  まだ宵ながら  明けぬるを  雲のいづこに  月宿るらむ
          
        詞書にある 「暁がた」とは、夜明け前のまだ暗い時分ということ。歌の中の "宵" は、夜に入ってまだ間もない頃を言うので、時間のずれがあるが、夏の夜が短いということを 「自分の感覚ではまだ宵のうちなのに」と言っていると見ておく。

  
夏の夜は宵のうちかと思うともう夜明けに近い、あの月は雲のどのあたりに宿を借りるのだろう、という歌。夏の夜の月を詠って夏歌に分類されているが、詞書の「月のおもしろかりける」という感じがあまり伝わってこない。中空に留まっている月に、早くしないと太陽のお出ましだ、その前にどこかの雲に宿を借りて隠れなさい、と言っているものか。宵と月を詠んだ歌としては、次の読人知らずの誹諧歌の方が面白い。

 
1059   
   宵の間に   いでて入りぬる  三日月の   われて物思ふ  ころにもあるかな
     
        また 「月が宿る」という言葉を使った歌としては、恋歌五に次のような伊勢の歌がある。

 
756   
   あひにあひて  物思ふころの  我が袖に  宿る月さへ   濡るるかほなる
     

( 2001/10/17 )   
(改 2004/02/23 )   
 
前歌    戻る    次歌