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       題しらず 読人知らず  
32   
   折りつれば  袖こそ匂へ  梅の花  ありとやここに  うぐひすの鳴く
          
        枝を折った時に袖に香りが移ったためか、ここにはないのにウグイスが梅の花があるかのように鳴いている、という歌である。

  言葉では "梅の花" と出しながらその実体は隠し、それを 「なし」と言わずに "ありとや" と表現している。また 「梅の香り」(嗅覚)と 「ウグイスの声」(聴覚)の結びつけ方が見事であり、全体として春の空間を詠った明るい感じの歌にまとまっている。

  梅の移り香を扱った歌は古今和歌集にいくつもあるが、その中でこの歌と趣旨が似ているものとして次の素性法師の歌を合わせてみたい。

 
47   
   散ると見て  あるべきものを  梅の花   うたて匂ひの  袖にとまれる
     
        「匂ふ」という言葉を使った歌の一覧は 15番の歌のページを参照。

 
( 2001/11/05 )   
(改 2004/01/13 )   
 
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