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       春たちける日よめる 紀貫之  
 
   袖ひちて  むすびし水の  こほれるを  春立つ今日の  風やとくらむ
          
     
  • ひちて ・・・ ひたして (漬つ)
  • むすびし ・・・ 手ですくった (掬ぶ)
  
立春の日の今日の風は、袖をひたしてすくったあの水が、凍っているのをとかすだろうか、という歌。 「礼記」の月令にある"東風解凍"という言葉を元にしていると言われている。それを暦上の春と合わせて、「とく−むすぶ」から掌で水をすくう動作を導くことにより、"凍" のさらに前の時間を含めることでイメージに幅が出ている。
 


        ただし、"袖ひちてむすびし水"という表現のリアルさが、立春の風が氷をとかすという幻想の中では少し重いように思われる。同じ貫之の"むすぶ水"ということで、この歌の背後に次の歌を見ることも可能である。こちらの方が含まれている意味が浅い分、効果が軽やかで親しみやすい。

 
404   
   むすぶ手の   しづくに濁る  山の井の  あかでも人に  別れぬるかな
     
        紀貫之は、910年少内記、913年大内記、917年従五位下、943年従五位上(従五位下になったのは906年という伝もある)。生年は868〜872年、没年は945〜946年とされるが不明。
 
( 2001/10/01 )   
 
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