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       題しらず 読人知らず  
913   
   難波潟  潮満ちくらし  雨衣  たみのの島に  たづ鳴き渡る
          
     
  • たづ ・・・ 鶴
  
難波潟に潮が満ちてきたらしい、田蓑の島に鶴が鳴き渡ってゆく、という歌。 「田蓑の島」の現在の場所は不明。「古今和歌集全評釈(下)」 (1998 片桐洋一  講談社 ISBN4-06-208753-7) によれば、大阪府大阪市北区中之島四丁目に掛かる 「田蓑橋」付近、あるいはその少し北西の大阪府大阪市福島区鷺洲あたりという説などがあるようである。また、大阪府大阪市西淀川区佃一丁目には「田蓑神社」という神社もある。

  「蓑(みの)」に掛けるために "雨衣" と出しており、枕詞となっている。 "雨衣" の 「雨」がインパクトが強いので、そこに雨があるようなないような不思議な感じである。その 「田蓑の島」を実際に雨の中で見た歌として、次の貫之の歌がある。この二つを並べてみると、今度は貫之の歌には鶴は出てこないにもかかわらず、そこに鶴が見えるような錯覚を覚える。 「鶴」を詠った歌の一覧については 919番の歌のページを参照。

 
918   
   雨により    たみのの島を   今日ゆけど  名には隠れぬ  ものにぞありける
     
        この 「田蓑の島の鶴」の歌は、単体で読むと 「田蓑の島」の上空を鶴が飛んで行くようなイメージでもあるが、万葉集・巻六919の山部赤人の

    若の浦に  潮満ち来れば  潟を無み  葦辺をさして  鶴鳴き渡る

という歌と並べてみると、満潮になって居場所が無くなった鶴が 「島」に移動している歌らしい、ということがわかる。ちなみに 「若の浦」は 「和歌の浦」で、その点で、偶然かもしれないが、一つ前の 
912番の歌の 「玉津島」と位置的につながる。

 
( 2001/12/11 )   
(改 2004/02/12 )   
 
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