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       父が思ひにてよめる 壬生忠岑  
841   
   藤衣  はつるる糸は  わび人の  涙の玉の  緒とぞなりける
          
     
  • 藤衣 ・・・ 喪服
  • はつる ・・・ ほつれる
  • 玉の緒 ・・・ 珠を貫いて通す紐
  詞書にある「父が思ひにて」とは、父の喪に服している時ということ。
喪服からほつれて出る糸は、悲しむ自分の涙を集めてつなぐ 「玉の緒」となっている、という歌で、水晶の念珠のイメージのある歌である。 「藤衣」には粗末な服という意味もあるので、糸がほつれ出るという感じと合っており、「涙の玉の/緒」という切れ方は見方によっては、悲しみで言葉が途切れているような感じを表わしているとも言える。

  単に言葉の音だけのつながりだが、この歌の 「はつる」は 「果つ」を連想させ、哀傷歌と恋歌の違いがあるが、悲しみと涙という点で、どことなく次の読人知らずの歌を思い出させる。

 
813   
   わびはつる   時さへものの  かなしきは  いづこをしのぶ  涙なるらむ
     
        「藤衣」を使った歌の一覧については 307番の歌のページを、「わび人」という言葉を使った歌の一覧は 292番の歌のページを参照。

 
( 2001/11/08 )   
(改 20041/01/25 )   
 
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