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       物思ひけるころ、ものへまかりける道に野火のもえけるを見てよめる 伊勢  
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   冬枯れの  野辺と我が身を  思ひせば  もえても春を  待たましものを
          
        詞書は「恋に思い悩んでいるころ、所用で出かけた途中で野火が燃えているのを見て詠んだ」ということ。

  歌の意味は、
もしこの身が冬枯れの野辺であるなら、燃えても春を待とうと思うのに、ということで、 「枯る−離る」を掛けて、我が身が一時的な 「冬枯れ」の野辺ならば、野焼きによって再びめぐる春を待つこともできるが、それさえままならない、もう希望の持てない状況なのだ、と嘆いている歌である。 「離る(かる)」という言葉を使った歌の一覧は 803番の歌のページを参照。

  本居宣長が「古今和歌集遠鏡」で、詞書の意をくんでこの歌を 「
従女(そなた)シウモ スヰリヤウシテタモイノ」と、連れの従女たちに語りかけているように補足して訳しているのが面白い。 「〜ましものを」という言葉を使った歌の一覧は 125番の歌のページを参照。

 
( 2001/12/05 )   
(改 2004/03/05 )   
 
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