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       題しらず 河原左大臣  
724   
   陸奥の  しのぶもぢずり  誰ゆゑに  乱れむと思ふ  我ならなくに
          
     
  • しのぶもぢずり ・・・ ノキシノブを使って摺りだした模様のある布
  河原左大臣とは、源融(とほる)のこと。この歌は百人一首にも採られているが、その一部が次のように変わっている。

    陸奥の しのぶもぢずり 誰ゆゑに 
乱れそめにし 我ならなくに

  「伊勢物語」第一段でも 「乱れそめにし」としてあり、
「古今和歌集全評釈(中)」 (1998 片桐洋一  講談社 ISBN4-06-205980-0) によれば、元永本などいくつかの伝本でも 「みだれそめにし」となっているものがあるようである。 「そめにし」であると染色つながりとなるが、どちらがよいかは微妙なところである。古今和歌集の配列から言えば、一つ前の 723番に「初花染め」の 「思ひし心」があるので、「そめにし」だと少しかぶる感じである。

  
あなた以外、他の誰のために偲んで乱れよう思う、この私ではないのだよ、という歌だが、少しわかりづらい。そんな私をあなたは見捨てようとするのか、というニュアンスか。

  「しのぶもぢずり」はその布の模様が乱れている状態から "乱れむ" を導く序詞であるが、同時に 「しのぶ−偲ぶ」を掛けて 「偲んで乱れる」ということを表しているように見える。この場合 「しのぶ」は 「忍ぶ」ではないだろう。 「しのぶ」という言葉が使われている歌の一覧については 505番の歌のページを参照。 "陸奥の" というのは 「しのぶ」にかかる枕詞で、本来は 「信夫(しのぶ)」という今の福島県福島市の地名を修飾したものである。

  最後の "我ならなくに" の 「なくに」は、文末/区切りにあって否定の詠嘆を表すもの。 1049番の左大臣(=藤原時平)の歌でも「おくれむと思ふ 我ならなくに」と使われている。 「〜なくに」という言葉を使った歌の一覧については 19番の歌のページを参照。

 
( 2001/10/23 )   
(改 2004/01/15 )   
 
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