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       題しらず 読人知らず  
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   かく恋ひむ  ものとは我も  思ひにき  心のうらぞ  まさしかりける
          
     
  • うら ・・・ 占い
  
このように恋してしまうことは自分でもわかっていた、心の占いは正しかった、という歌。

  歌の前半、「かく恋ひむものとは」とあるのでその後ろには 「思わなかった」などの反語が続くことが予測されるが、「思ひにき」は 「思ひ+に+き」で、「思ふ」の連用形+完了の助動詞「ぬ」の連用形+過去の助動詞「き」の終止形で、反語のかたちをしていない。逆に 「にき」は 226番の遍照の歌などでも「女郎花 我おちにきと 人にかたるな」と使われているように、「〜してしまった/確かに〜である」という意味である。妙な味があるといえばあるが、あまり心地よいものではない。

  また、"心のうら" という言葉も引っかかるが、これは他人にしてもらう占いではなく、自分でした占いということであろう。誰にも言わない 「忍ぶ恋」から発展した恋であることを表しているようである。

  「まさし」を使った他の歌には、374番の「関しまさしき ものならば」という難波万雄(なにわのよろずを)の歌と 1042番の「まさしやむくい なかりけりやは」という清原深養父の歌がある。

 
( 2001/11/29 )   
(改 2004/01/09 )   
 
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