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       寛平の御時きさいの宮の歌合せのうた 藤原興風  
568   
   死ぬる命  生きもやすると  こころみに  玉の緒ばかり  あはむと言はなむ
          
     
  • 玉の緒 ・・・ 珠をつなぐ紐
  
恋しさで死んでしまいそうな命が救われるかもしれないので、試しにほんの少しでも逢おうと言ってみてください、という歌。 "玉の緒" は短いことの譬えとしても使われている。言葉としては、最後の "あはむと言はなむ" の 「む」のうねり方がすがるような粘り気を感じさせる。

  短さを言う 「玉の緒」の例としては、673番の読人知らずの歌に「あふことは 玉の緒ばかり」とあるほか、次の貫之の 「古歌たてまつりし時の目録」の長歌でも使われている。

 
1002   
    ちはやぶる  神の御代より  呉竹の  世よにも絶えず  天彦の  音羽の山の  春霞  思ひ乱れて
  五月雨の  空もとどろに  小夜ふけて  山郭公  鳴くごとに  誰も寝ざめて 唐錦  竜田の山の
  もみぢ葉を  見てのみしのぶ  神無月  時雨しぐれて  冬の夜の  庭もはだれに  降る雪の
  なほ消えかへり  年ごとに  時につけつつ  あはれてふ  ことを言ひつつ  君をのみ  千代にと祝ふ
  世の人の  思ひするがの  富士の嶺の  もゆる思ひも  あかずして  わかるる涙  藤衣  おれる心も
  八千草の  言の葉ごとに  すべらぎの  おほせかしこみ  まきまきの  中につくすと  伊勢の海の
  浦のしほ貝  拾ひ集め  取れりとすれど  
玉の緒の  短き心  思ひあへず  なほあらたまの
  年をへて  大宮にのみ  久方の  昼夜わかず  つかふとて  かへりみもせぬ  我が宿の
  しのぶ草おふる  板間あらみ  ふる春雨の  もりやしぬらむ
     

( 2001/12/11 )   
(改 2003/12/25 )   
 
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